最近、混合歯列期(永久歯と乳歯が混ざったお口の中)の患者さまに歯並びの話をさせて頂くと取り外しの出来る装置での矯正はどうなのか?とご質問をよく受けます。
基本的に床矯正の概念は、咬合誘導/将来的にキレイな歯並びになる様にアゴを出来るだけ拡げましょう、歯のデコボコをとりましょうと言うことです。
おもに小児歯科の先生方がよくされる治療ですね。
決して悪くはないと思うのですが、治療のゴールをどこに設定するのかで解釈は大きく変わります。
まずアゴを拡げると言っても、横に拡げるのか、縦に拡げるのか?
上顎に関しては、骨の構造上、正中口蓋縫合という骨の接合部がありますので力を加えれば確実に横には拡がります。
縦方向はどうでしょう?
奥歯をもっと後ろにさげる事は可能です。
しかしながら取り外しの出来る装置では半年がんばって頂いて2~3mm後退する位ではないでしょうか。努力に対しての効果がちょと。。
固定式であればその2~3倍の効果が期待出来ます。
ただ日本人は欧米系の方に比べ、短頭系でアゴが前後に短く、横に広い形をしています。
6番目の歯に対して力を加える事が多いのですが、6番を奥にやりすぎて7番目の歯の出るスペースをなくす訳にはいきませんので、事前のセファロ(頭部規格エックス線写真)による計測が大切です。
下顎はどうでしょうか?
確かに力を加えれば歯は動き、それに伴い骨の形も変わります。
しかしながら上顎のように縫合部がないため(骨の接合部での骨添加が期待できない)ベースの部分では変化なく歯を支えている部分の骨のモデリングが起こります。
つまり歯列は拡がった様に見えますがベースはそうじゃないという事ですね。
よく床矯正をすすめられるのは前歯がずれてはえてきた時ではないでしょうか。
前歯をキレイに並べるのがゴールであればとてもイイ治療法です。
しかしながら最近はアゴがより小さくなってきている傾向があり、前歯がキレイに並んでも横の歯が生えてくるとまたずれてしまう事も多いと思います。
解釈の仕方ですが、時間と費用をかけて矯正するのですから将来の安定はとても重要で、この何年かだけOKというのは如何なものかと感じます。
また、ずっと床矯正を永久歯に生え換わるまで続けるなんてナンセンス。
よく床矯正で歯を拡げて、ベースは拡がらないので歯がフレアーアウト(外にななめに傾斜)して前歯が当たらないオープンバイト、バイマックス(上下顎前突)になって口もとが出ているケースをみかけます。
それでも歯を抜かずに並んだんだからイイと言うのであればOKですが、無理をした動かし方は安定せず将来後戻りを起こします。
床矯正に限らず、矯正治療を受ける場合は優先順位を明確にするべきです。
私たちは歯を抜かなくてもバランスのとれたかみ合わせと口もとの美しさが確立出来るのであれば勿論抜歯はしません。
床矯正も筋機能訓練などと組み合わせるととても効果のある治療法ですが、将来的にはどうなるのかと言う話し合いは重要ですね。