院長ブログ・コラム

顎関節症、スプリント、ブラキシズムについて最近の見解

私が大学を卒業し、矯正科の医局に残った当時
歯学界はナソロジー理論に傾倒していました。
What is Nasology
Nasology is Dentistry とまで言われていましたね。
曰く、CO=CR
中心位と中心咬合位が一致して、適切な歯冠形態を付与すれば歯は摩耗もしないし
顎関節症とも無縁。。

顎関節症は
「咬合関係あるいは上下顎関係の不調和のある状態で、咀嚼あるいは嚥下を行うと、下顎は後方へ偏位し、関節内で円板の前方転位が生じ、それにより脈管と神経の豊富な後部結合組織が圧迫されることで疼痛が惹起され、さらにその状態で生活を続けることで、関節内では骨の変形がはじまり、咀嚼筋には疲労と炎症が慢性化し顎関節症になる。
したがって、無意識に顎と咀嚼筋に過剰な負担が生じる夜間のブラキシズムが主な原因因子と考えられ、治療法は、咬合関係を是正し、関節と筋を安静にして保護するスプリント療法が初期治療の第一選択となりうる。。
上記は歴史的定説として、広く知られている顎関節症のとらえ方と治療法ですが、実は2000年をまたぐころから、そのほとんどが大きく覆されています。

開口障害、疼痛、クリックこの3つが揃うと、顎関節症の病名が付きますが
そもそも顎関節症は多因子疾患であり

1解剖因子 関節、筋の構造的脆弱性のある状態で生活する(初期治療ではスプリントによる安静と保護)
2咬合因子 不良な咬合関係で生活する(初期治療では咬合の変更は行わず、スプリントによる保護と安静)
3外傷因子 打撲 転倒 交通外傷 (急性症状のため安静、投薬を基本)
4精神的因子 精神的緊張 不安 抑うつ (初期治療では治療対象としない)
5行動的因子
①日常的な習癖:上下歯列接触癖(TCH)、頬杖、受話器の肩ばさみ、爪かみ、スマホの操作、下顎突出癖
        筆記具かみ うつぶせ読書
②食事    :硬固物咀嚼、ガムかみ、片咀嚼
③就寝時   :ブラキシズム、睡眠不足、高い枕や硬い枕のの使用、就寝時の姿勢、手枕や腕枕
④スポーツ  :コンタクトスポーツ、球技スポーツ、ウインタースポーツ、スキューバダイビング
⑤音楽    :楽器演奏、歌唱(カラオケ)、発声練習
⑥社会生活  :緊張する仕事、PC作業、精密作業、重量物運搬

等、様々な要因からなり多因子疾患の治療は各因子に対応することになっていますが
多くの歯科医師は、スプリント+生活指導を選択しています。
つまりリスク因子排除療法ですね。
スプリント+生活指導を選択した場合の治療期間は?
・軽症であれば数週間から数か月で治りますが
・重症の場合には数か月、場合によっては数年かかることもあり
軽症か重症かは治療してみないとはっきりしないのです。
クリックに対する誤解もあり、関節雑音は関節症になる切符でないことが判明しています。
世界の潮流としてリスク因子排除療法はトーンダウンしています。
年齢層別クリックの保有率(健常者)を調べた論文では平均で18歳以上の健常者の3人に1人にクリックがあり
クリックはそのまま様子をみましょう→円板の前方転位もそのままでいいでしょうとなりました。
1990年代~MRIによる画像解析が可能になり、治癒後の円板転位を画像で確認出来るようになると今までの解釈は矛盾だらけでした。
LeBelly医師によると円板は復位して再転位する例が多い
治療開始時の円板復位率:100% 疼痛なし
4年後の円板復位維持率 :57%  疼痛なし
6年後の円板復位維持率 :41%  疼痛なし
つまり関節円板の復位と疼痛症状の消退との関係は薄いことが分かります。
MRIでは円板が落ちたままでも結合組織による偽円板が出来ているのが観察されました。
つまり関節雑音は関節内に起こっている一つの指標に過ぎず、TMDの重症度と一致せず、完全に消失させることは難しいことから、疼痛や開口制限などの機能不全を伴わない場合は治療の対象にする必要がありません。
関節からの音は、関節を破壊しないようにするために、無理な力や熱が発生したときに音のエネルギーに変換して、関節の破壊を送らせています=関節からの音は消す必要はありません。
円板転位患者の開口訓練について
・円板が急に大きくずれた瞬間は開口時痛が生じるが一過性
・円板が徐々にズレている場合は気が付かない
・治療方針:関節円板がズレている人には円板はズレたままで痛みを我慢してもらい円板をもっと押し出します。
クローズドロックは関節なのか筋なのかは不明で
MRIで急性クローズドロックを発症した40症例を2週間ごとに12週間経過観察したところ
12週後には95%(38症例)が回復しました。
治療で関節円板の復位は維持できなくとも症状は消失し続けることが分かりました。
身体の対応力ブラボーですね。
顎関節痛がある場合、滑膜の免疫暴走が考えられます。
グルコサミン、コンドロイチン、プロテオグリカンなどサプリメント3割位は効果が認められています。
アセトアミノフェン(カロナール)は有効で1回1000㎎1日最大4000㎎までOKです。

スプリント療法の世界の評価はやってみないとわからない治療、なぜ効いたかわからない治療?と言われています。
顎関節症とブラキシズムに使用されますが作用機序は不明で効果は
・ブラキシズムレベルを一時的に減弱
・減弱効果のある時間→装着後2週間から3ヶ月まで
・プラセボ効果は確認されています。
関節症にてマウスピース治療の成功率は
・~2000年頃   70~80%前後の治癒率という報告が多かった。
・2000ー2010年頃 システマチックレビューで50%前後という報告が多くなってきた。
・2010ー2021年頃 無効あるいは他の治療法に劣るという報告が多くなってきました。
またスプリントの有害事象として下顎が偏移しオープンバイト化してしまうことがあります。
顎関節症の治療では3ヶ月以上の使用は避けるべきです。

保険診療では関節症病名でスプリントの製作が可能ですが
上記したように3ヶ月のみの使用をお勧めしています。
生活習慣の見直し、運動療法、マッサージが有効です。
自由診療になりますがボトックスも有効ですね。

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